「役に立たない」研究の未来 の感想

著:初田 哲男,大隅 良典,隠岐 さや香 編:柴藤 亮介
出版社:柏書房 値段:1500円(本体)
役に立たない、と言われがちな基礎研究を今後どのようにしてばいけばいいのか。というのがテーマ。
もともと同じ題で行われたイベント、講演会的なのがありそれを書籍化したもの。そのため会話口調で読みやすい。
実際に基礎研究をしている研究者、科学史を研究している研究者、研究者のクラウドファンディング的なのを運営している人、といった複数のバックグランドの人々でのディスカッションとなっている。基本的には基礎研究を重要視しており、いわゆる「役に立たない」研究をもっと自由にやれるようにしたいという方針が全体を通してある。
自分自身がミミズの繁殖というほとんど役に立たないであろう基礎研究を学部の卒業研究からやっている関係でかなりテーマにそそられた。基礎研究はさらなる基礎研究のために必要不可欠でありそれが応用研究の成果の源泉でもある、また基礎研究の段階で役に立つかどうかを見極めるのは非常に難しい。そもそも文化、知識として価値があるといったことが展開される。
感想としては大きく2つ。
1つめに私はどちらかといえば研究者側なのでもっと研究のことをいろいろな人に伝えなければ、と思った。実際はそこまででなくとも研究って言われてもよくわかないという人が少しでも研究の輪郭を感じられるようになってくれればいいなと感じる。 普段、研究室や大学でのつながりの人々はアカデミアに属している人が多いため研究に対しての解像度が一般の人よりもかなり高い。たまにバイト先や社会人サークルの人と大学院の話などをするとそもそも大学院って何年行くの?ということは多いし、そもそも研究って言葉は知っていても実態がよくわかっていなさすぎるなという反応が多い。たぶんこういうところから少しずつかえられたらいいのかなと。変えるなどというおはおこがましいけれど。 別に研究者が職業として素晴らしいとかは言うつもりはない。ただし研究には実際問題としてある程度金が必要でありそれは回り回っては税金から捻出されている。その中である程度は知っておいてもらうことは正しく金が使われる、納得感を感じる上で必要になるだろう。予算資料でよくわからない項目に金を払い続けるのはあまりいいものではない。
2つめにミミズの繁殖をテーマとして楽しくおもえていることを大切にしようと思った。大隅さんが特に最後の方に書かれていたこととして最近は昔に比べ自分が楽しいと思うからやるのではなくうまく研究が進められそうだからという理由のテーマ、研究室選びが多くなっているとのこと。それもある程度しょうがないところがあるのは周りを見ていても感じる。ただ、本来の研究者は自分の興味を持つこと、楽しいことを追求するもんでしょう、と。その意味では自分のミミズの繁殖というテーマは少なくとも日本では自分が一番興奮しているだろうからこれを信じて研究をし続けようと思う。たぶん何度も失敗と後退を繰り返すだろうけれど。 流行りの研究じゃなくて自分の楽しいことをやろうよ、という文章で学部のときのシステムバイオロジーの授業を思い出した。その授業は夏休みの集中で大学の教員ではなく理化学研究所の先生が授業をしてくれたんだが印象にのこっている話として今流行っている分野をやらないほうがいい、という話がある。 その先生いわく流行りっていうのはずっとつづくわけではなくあくまで一時的なものだろうと。その意味で今流行の分野を大学生、大学院生がやっても研究者として一番盛り上がる40,50代の頃には流行りが終わった畑になってしまっていると。なるほど確かにというこの話と似たものを感じた。 ミミズの繁殖研究、もっと広く言うなら理論生態学や数理生物学が20,30年後に流行っているとはあまり思えないけれど少なくとも今はやっているという理由で初めて気づいたら廃れているよりは好きなものをやり続けるほうがいいかなと思う。
そんなことを思いながら今日もやれるだけ研究したい。しなくてはいけない。