「夜と霧」の感想
「夜と霧」はフランクルがナチスでの収容可の経験を綴った本である。
高校のときに倫理の授業ででてきたのは覚えているが詳しい内容は知らずに過ごしてしまった。以前ふと本屋で見かけたときに買っていたが積読されてしまっていたのを本棚から取り出した。
哲学書は基本的に読みにくいものが多いがこれはかなり読みやすい。哲学書というよりもエッセイのような感覚であるしそもそもこれは哲学書と言っていいのか。
全体は大きく3つに別れている。収容前、収容中、収容後でわかりやすい構成。読んでいて思ったのはやはりこれは哲学書ではなく精神医学者の体験記に近い。ちなみに「夜と霧」には旧版と新版があり私は新版を読んだが旧版は更に体験記的な性格が強いとのこと。
読んでいると限界状態の精神や人間性、など様々知識としての蓄積もあるがとにかく暗い。過酷すぎる環境での強制労働、監視管などからの理不尽な罰、衛生面はひどく食事もままならない生活である。終わることのない絶望を感じ続けることになる。しかも辛いのが収容後、解放されてからもすべて解決して平和ではないということ。収容中の精神の歪みがなかなか解消されない、待っていた人はもう死んでいるというつらすぎる現実をひたすらに突きつけてくる。フランクルがこれを体験しておきながら戦後、精神医学の教授として仕事をしているのが異常なほどすごい。収容中に本人が弱っている場面は多々あるが精神、人格が破綻しなかったのはただただ尊敬するばかりである。また戦争、ナチスの批判をひたすらにすることなくただただ精神医学者としてありのままを記述し分析している部分は実際やろうと思っても難しいだろう。感情論を入れ込まないで戦争の体験を記述することはなかなか困難なのではないだろうか。
これらの暗く、きつい内容でありながらも書き手と翻訳が非常に読みやすいため数日で読み終えることができる。精神の限界について、生きる意味についての書籍としてぜひ一人でも多くの人に読んでほしいと思った。数少ない誰にでもおすすめできる本である。